パブのすすめ〜O’NEILL’Sにて〜

imageアイルランドといえばギネスが有名だが、もちろんそれ以外にもたくさんのビールが飲まれている。最近はクラフトビールの人気の高まりとともに、新しい銘柄を見かける。ギネスが出したラガー HOP HOUSE 13だとか、キラーニーだとか。日本では味わえない銘柄を味わってみるのも楽しみのひとつだ。たくさんの種類を試したい人なら醸造所を兼ねているJ. W. SWEETMAN のようにテイスティングができるパブも気にいるに違いない。

特に目当てがない場合、どのパブに行ったらいいか迷うかもしれないが、良さそうだなと思えるパブがあったら思い切って入ってみることをおすすめする。だいたいどこのパブでも美味しいビールやウィスキーが飲めるし、食事もできる。もちろん、地元の人にとってはお気に入りのパブというのがあるものだが、当然ながら人によって好みは異なる。せっかくの機会だ。自分にとって居心地のよいパブを探してみるといいと思う。たまに愛想の悪いバーマンに当たってしまって嫌な思いをすることがあるかもれないが、そんな時は店を出て他のパブを探せばいい。石を投げれば当たるくらいパブがあるのだから。

imageまた、パブでの食事もおススメだ。そんなに量は欲しくないというのであればスープ・オブ・ザ・デイを試してみるとよい。料金もだいたい5ユーロ弱とお手頃だし、味も期待を裏切らないと思う。いわば日替わりスープがブラウンブレッドと一緒に出される。スープはコクがあって腹持ちもいいものが多い。私は甘みの強いブラウンブレッドにバターをつけて食べるのが大好きなのだが、アイルランドに来たらこれもぜひご賞味いただきたい。シーフードチャウダーもクリーミーでコクがあり、具がザクザク入っていてとても美味しい。

ダブリンのシティセンターにぶらりと出かけた日、これまた1713年創業のO’NEILL’Sという老舗のパブにぶらりと入り、遅めのランチをとることにした。セルフ形式でオーダーするのだが、メニューを手渡されてその種類の多さと充実ぶりに驚いた。

imageラムシャンクを頼むと、マッシュポテトのにうえに骨つきのラム肉がドーンとのって出てきた。これで12.95ユーロ。子どもの頃に憧れた「はじめ人間ギャートルズ」の肉の実写版みたいなボリュームにテンションがあがる。この国の人はラム肉をよく食べる。日本では特定の場所でしか食べられないから、ラム好きとしては嬉しい限りである。せっかくなのでギネスもハーフパイントをオーダーする。

人気のパブだけあって、昼下がりの時間でも混み合っていた。私の前のラウンドテーブルでは、フォーマルな装いの品のよさそうな老夫婦がギネスを楽しんでいた。隣のテーブルでは、3人の若者がパイントを次々と空けていた。その内の20代後半くらいであろうひとりの若者が話しかけてきた。酔いが回っているのが一目でわかるが、時折、じゃましていたらごめん、と謝るあたりに、憎めない人懐こさが感じられた。コークからやって来たらしかった。ダブリンは日本人から見れば小規模だし、コークはアイルランドで2番目に大きい街だが、ダブリンは落ち着かないと言い、おのぼりさんの雰囲気を醸し出しているのがおかしかった。

image「せっかくダブリンに来たから昨日はCopper Face Jacksへ行って踊りまくったぜ」と彼が口にしたそのナイトクラブの名に覚えがあった。昔、友人たちに誘われて時折遊びに繰り出した場所だ。そのクラブがまだあることに驚き、若かりし頃そこへ行っていたなんて、なんだか自分が化石にでもなったような気分になって、懐かしさとともに赤面したのだった。

しばらくして、彼が聞きたいことがあるんだけど、と前置きしたあとで言った。
「日本では女性は第二階層民として扱われているというのは本当かい?」
恐らく男尊女卑のことを言っているのだなと思った。私は女ではあるけれども第二階層民ではない。もしそうなら、ひとり旅をしてぬくぬくとパブでひとり飯を堪能しているはずがない。
「アイルランドと変わらないと思うよ」
外国の人が抱くイメージと現実とのギャップがおかしくて、笑いながら答えると、なるほどと言って、彼は少しバツの悪そうな顔をした。
「でも、こうやって交流することでいろんなことがわかるよね。よその国の人はアイリッシュは皆ギネスばかり飲むと思っているだろうけど、そうじゃない。俺たちアイリッシュはハイネッケンを飲むんだ」
なるほどね、と私はうなずく。でも、彼の言葉を鵜呑みにはしない。だいたい酒飲みは自分が好む酒が一番だと言いたがる。確かにハイネッケンの人気は高いけれど、アイルランドの人は本当にギネスをよく飲む。

「あなたは外国に旅行する予定はないの?」
私が尋ねると、彼はちょっと照れたように答えた。
「11月にアイスランドへ行って彼女にプロポーズしようと思っているんだ」
なんでも、7年も付き合っている彼女がいるらしい。
「俺はどうしようもない奴なんだけど、そんな俺を長年支えてくれた彼女のことを愛しているんだ」
酔いに任せてなのか彼は言った。実際に、I love her.という表現を使った。
「どうしてアイスランドなの?」
「星がキレイだからだよ。そんなところでプロポーズしたらロマンチックだろ」
彼は、いい考えだろと言わんばかりのドヤ顔を見せた。

くぅ、このロマンチックボーイめ。ただの酔っ払っいのにいちゃんかと思ったら、いい奴じゃないかとほっこりした気分になった。
「プロポーズが上手くいくことを願ってるよ」
彼と握手を交わし、私はO’NEILL’Sをあとにした。

ひとりの時間を過ごすのもいいし、誰かとの時間を共有するのもいい。たまたま隣になった人と会話を交わしてみるのもいい。パブにはいろんな楽しみがつまっている。

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