6月2014

座敷わらしとおっさんの謎

  つい先日、その日が5歳上の兄の誕生日であることを思い出した。結構な歳になったなあ、とちょっと気が遠くなった。まあ、向こうも私に対して同じことを思っているだろうけれど。「誕生日おめでとう、体に気をつけてがんばって」とメールすると、「ありがとう。早いものだな、こっちは体もボロボロだけど、おたがい体に気をつけてがんばろう」と返信が来た。

 多分、私たちは仲の良い兄妹ではあるけれども、兄が結婚して以来、顔を合わせる機会はめっきりへった。ちぇっ、男兄弟というのは結婚するとつまらないものだ、と思ったものだ。少しばかり前のことになるが、そんな兄から夜中に突然着信があった。その日私は疲れがたまってくたくたで、珍しく次の日に備えてすでにベッドに入り、うとうとと眠りかけていた。よりによって、そんな時にケータイが鳴った。一瞬スルーしたい気持ちに駆られたが、こんな時間にまさか何かあったのかも知れないと思い直して電話に出ると、兄は一言、「今夜、泊めてくれないか」と暗い声で言った。

 重い体をひきずって、床にふとんを敷いて待っていると、兄がやってきた。兄は「悪いな」とだけ言うと、布団にもぐりこみ寝てしまった。ちぇっ、なんだよ、と思いつつ、でも、まあいろいろあるんだろうと何があったか追求することもなく私も再びベッドにもぐりこんだ。

 029591 そういえば、ずっと前にも夜中に兄に起こされたことがあった、と思い出した。まだ2人とも実家に住んでいた頃のことだ。その日、父が友人から石のお地蔵さんをもらってきた。特徴的な目鼻立ちの、こどものような顔をしたかわいらしいお地蔵さんだった。その夜のことだ。

 私の部屋のふすまをトントンと叩く音で起こされた。続けて、「でた!でた!」と言って兄がふとんをひきずって入って来た。そして「ここで寝させてくれ」とふとんを敷きだした。聞けば、寝ていた兄は、てけてけてけ、と何かが走りまわる音で目を覚ましたという。そして目を開けた瞬間、上から「おにいちゃん、遊ぼう」と子どもが覗き込んだというのだ。わっと驚いて、でも動けずにいると、次の瞬間、その子は部屋の隅っこに立っていたらしい。おかっぱ頭で、ちゃんちゃんこを着ていたという。その子どもがいつの間にか消え、体が動くようになった兄は怖くなって、私の部屋に避難してきたというのだった。そんなことを聞いたら私も怖くなって、ドキドキして眠れなくなった。だが当の本人は速攻で眠りについて、横でぐうすかといびきをたてているのだった。

 翌日、私は寝不足だったが、兄はすっきりした顔で起きて来て、「あの子ども、おかっぱ頭だったけど顔がお地蔵さんにそっくりだった」と前日我が家にやってきたお地蔵さんを見て言うのだった。家族中、その話で盛り上がり、結局、あれはお地蔵さんが座敷わらしになって現れたのじゃないか、ということになった。座敷わらしを見た人には幸運がやってくるというが、確かにそれ以来、兄の仕事は順調にいきだした。

 どうして座敷わらしは私のところに現れてくれなかったんだろう、とちょっとがっかりした。その正体がお地蔵さんとして、どうしてつるつる頭のお地蔵さんがおかっぱ頭で現れたのか、それも謎だった。

 兄が私の部屋に泊まったのは座敷わらしの出現以来だ。今は私も兄も東京に暮らしている。結婚した兄には子どもが2人いて、上の子はいつの間にか高校生になった。本当に月日の経つのは早い。翌朝起きだして、布団の上に正座で背中を丸めて座っている兄を見たら、月日の流れの重みをひしひしと感じた。そこにいるのは、立派な、おっさんのかたまりだった。私の兄であることに変わりはないが、月日が経つうちに兄は夫になり、父親にもなった。そして、おっさんにもなっていた。なんとも言えない気持ちで兄の横顔を見ていたら、耳からひょろひょろと毛が出ているのが目に入った。「ねえ、耳毛生えてるよ」と教えてやると、兄は眠そうに目をこすりながら、「なんでかねえ、生えちゃうんだよね」と言った。

 どうして、耳毛は生えるのだろう?
 おっさんのくしゃみの音がでかいのと同じく、まったくもって謎である。 

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興福寺ノスタルジー

猿沢池TOKIOの国分太一が「おさんぽジャパン」という番組で、奈良の興福寺五重塔を訪れ、その荘厳さに感動していた。確かに興福寺の五重塔はかっこいい。だけど、ひっそりとたっている三重塔も見逃さないでいただきたい。地味だけど、興福寺最古の建物で国宝なのだ。平安建築の様式を伝える鎌倉時代の建物である。

興福寺といえば、数年前、その人気に火がついて仏像ガールが急増した阿修羅像で有名な寺でもある。あまのじゃくな私が仏像めぐりから遠のいたのはその頃だ。というわけで、興福寺国宝館を訪れるのは数年ぶりとなった。

歴史の教科書に載っていた山田寺の仏頭(今は興福寺仏頭らしい)とか、木造天燈鬼・龍燈鬼立像とか魅力的な仏像がたくさんあるが、久しぶりに行ってみたら、グッズだったり配置だったり阿修羅推しの強さが伺えた。凛としたたたずまい、プロポーションのいい細身の身体、そして端正な顔立ちをした3つの顔に6本の腕という異形を持つギャップ。確かに、そのどれをとってもスター的な輝きを放つ阿修羅は素敵である。でも、阿修羅像を含む乾漆八部衆立像のなかで、私の推しメンは迦楼羅(かるら)像だ。ちなみに八部衆というのは、仏教に帰依して仏法を守護するとされるインドの8神を指す。

顔が鳥だよ!?

顔が鳥だよ!?

顔が鳥で身体が人間というパンチのきいた風貌をした迦楼羅。奈良のマスコットキャラ、せんとくんが登場した当初は批判も多くて、神聖な仏に鹿の角を生やすとは何事だ!という意見があったが、「迦楼羅なんて顔が鳥だよ?」と思ったのは私だけだろうか。国宝館を訪れる機会があったら、ぜひ迦楼羅に注目していただきたい。スカーフを巻き、左斜め45度を向くその姿は、カタログやチラシで見かけるモデルのようでさえある。

また、八部衆立像と同じ工房で作られたとされている十大弟子像も見逃さないでいただきたい。お釈迦様の高弟10人のうち、6人の弟子の像が展示されている。この中に須菩提像があるのだが、その若者らしき顔立ちから、実は阿難ではないかという説がある。須菩提像はとってもあっさりした日本人の顔に作られており男前ぶりはうかがえないのだが、阿難は美男子だったことで知られている。その美しさに女性たちが見とれてしまってお釈迦様の話を聞かないので、阿難はお釈迦様から女性と目を合わせてはいけないと言われたと、何かで読んだことがある。現代だったら、「美しすぎる釈迦弟子」とかキャッチコピーがつきそうだ。彼は美男子であるがゆえに悟りを開くのが遅れたとも言われている。文字通り、美しすぎたわけだ。人生の進路を阻むほどの美男子ぶりって、どんだけ男前なんだよ、と思うとワクワクする。ロマンすら感じる。私が小学生の頃から「私の男前ランキング」1位に君臨し続け、今や殿堂入りを果たしている草刈正雄も比じゃないくらいの男前に違いない、と勝手に決めつけている。

猿沢池から見える興福寺の五重塔を見るとノスタルジックな気分になるとともに、阿難のことが思い浮かぶ。でも、想像力を働かせてみても、テンションとともにハードルが上がりすぎて、絶世の美男子、阿難の想像はまったくつかないんだな、これが。

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サクラカフェでの昼下がり

ケデュヌ近頃気に入っている池袋のサクラカフェ。ここは、向かいにある外国人旅行者に人気のホテルに併設されたオープンカフェで、24時間オープンしている。ランチは、週がわりで世界のいろいろな料理が楽しめる。

今回私が選んだのは、コートジボワールのケデュヌ。お店のHPによれば、ケデュヌは「混ぜる」という意味を持つ、鶏肉をトマトや玉葱の水分だけで煮込んだ
アフリカンシチューだそうだ。鶏肉とパプリカがプリプリして、味付けもちょうど濃すぎず、おいしかった。 

コートジボワールは、子どもの頃集めていた切手の中にこの国のものがあったような気がするぐらいでまったく知識がないが、そういえば日本のワールドカップ初戦の相手だったな、と思い至る。

ワールドカップがもうすぐ始まると思うとワクワクする。あるとき思いついてから、私は4年に1回のワールドカップスパンで人生を考えるようにしている。4年ごとに比べたらいい意味で生活に変化を持っていたいと思うのだ。特にサッカーに詳しいわけでもないが、そんなこともあって、ワールドカップが始まれば、私はにわかファンと化す。

コートジボワール

コートジボワール

アイルランド

アイルランド

コートジボワールの国旗はアイルランドの国旗にとてもよく似ているなあなんて思いながら、ケデュヌを食べ終えてアイスコーヒーをすすっていたら、有線からスパイス・ガールズの「Wannabe」が流れてきた。懐かしい。アイルランドに留学していた頃、人気絶頂だったスパイス・ガールズ。5人のメンバーには、それぞれニックネームがついていた。ジェリはジンジャー・スパイス、メル・Bはスケアリー・スパイス、メル・Cはスポーティ・スパイス、エマはベイビー・スパイス、ヴィクトリアはポッシュ・スパイス。仲が良かったアメリカ人の友人は、服装のテイストから私をスポーティと呼び、私は彼女をポッシュと呼んでいた。なんだか、こう書くと恥ずかしいけど、スパイス・ガールズは私の青春でもあり、曲を聴くと今でもテンションが上がる。

spice2当時、スパイス・ガールズのメンバーの将来を予想した雑誌があった。中でも酷評されていたのは、ヴィジュアル担当とされていたポッシュことヴィクトリアだった。とっとと結婚して有名サッカー選手の妻として専業主婦になるのが得策だろう、と辛辣なコメントで締めくくられている記事を読んで、ひどいこと書くなあと思ったから記憶に残っている。

ところが結果は、あの記事の予想を大きく裏切るものだった。今やヴィクトリア・ベッカムは世界のセレブとなりたびたび世間を賑わしている。私はスパイス・ガールズが好きなのであって、特にメンバー個人のファンというわけでもないのだけれど、メディアでとりあげられるヴィクトリアを見るたびあの記事が思い出されて、ポッシュやるじゃん、と胸がすく思いがする。こういう裏切り方は気持ちがいい。誰かのシナリオどおりとか、予想どおりなんてつまらないもの。

スポーティと呼ばれていたあの頃、こうして東京の片隅でランチを楽しんでいる自分なんて想像もつかなかった。4年前の自分と比べてみても、確かにいろんなことが変わっている。失ったこともあるし、得たこともある。さて、これから4年後、自分はどうしているだろう。人生は何が起こるかわからない。だから面白いんだけれども、4年後に向けての一歩をどこに向けて踏み出すか、その策はねらなくちゃ。でもまずはその前に、ビール片手にワールドカップを楽しもう。

がんばれ、日本!pics2648-2

 

サクラカフェ池袋⇒http://www.sakura-cafe.asia/ikebukuro/index.php

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